前立腺炎とは、男性にのみ存在し、膀胱の下で尿道を取り巻くように存在する前立腺が、何らかの原因で炎症を起こす疾患です。
細菌感染によるものと、細菌感染を伴わないもの、急性発症のもの、慢性の経過をたどるものがあります。
急性前立腺炎
細菌が尿道から侵入して、前立腺に感染することで発症します。
ほとんどの場合は大腸菌が原因菌となります。
症状
発熱、悪寒、倦怠感、排尿時の痛みや頻尿、会陰部や下腹部の痛みなどが起こります。
検査・診断方法
尿検査
炎症性細胞(白血球)の有無などを検査します。
腹部超音波検査
前立腺の腫大が確認出来ます。
直腸診
お尻から指を挿入し直腸越しに前立腺に触れて診察します。前立腺に触れた際に、熱感や圧痛を感じます。
尿培養検査
尿中に繁殖する細菌の種類を確認します。
採血検査
炎症の値などを確認し、重症度を判定します。
治療
抗菌薬投与を行います。軽症の場合は抗菌薬の内服で改善する場合もありますが、抗菌薬の点滴が必要となることが多いです。
重症の場合は、入院での加療が必要となることもあります。
治療後
急性前立腺炎治療後に、会陰部の不快感などが遷延する慢性前立腺炎に移行することもあります。
慢性前立腺炎
男性にのみ存在し、膀胱の下で尿道を取り巻くように存在する前立腺に炎症が起こる疾患で、20-40歳代と比較的若い世代に見られます。
症状
下腹部の痛みや不快感はありませんか。
何となく違和感が持続している場合、慢性前立腺炎の可能性があります。
1週間で次のような症状があったか、チェックしましょう。
NIH慢性前立腺炎症状スコア(NIH-CPSI)
痛み・不快感があった場所 | 直腸と睾丸の間(会陰部) 睾丸 ペニスの先 腰より下、恥骨・膀胱付近 |
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出来事 | 排尿時の痛み・やけるような感じ 射精時の痛み・やけるような感じ |
上記の痛み・違和感の頻度 | まったくない まれにあった 時々あった しばしばあった 常にあった |
症状の度合い | まったく痛くない ~これ以上の痛みはない |
原因
慢性前立腺炎のはっきりとした原因は、まだわかっていません。
しかし、尿道から細菌が侵入し前立腺に感染することや、前立腺周囲の血流障害による慢性的な炎症などが影響しているとされています。
仕事などで長時間座っている方、自転車やバイクでの会陰部への圧迫、ストレスや疲労、過度の飲酒、喫煙、冷えなども慢性前立腺炎のリスクとなると考えられております。
検査・診断方法
慢性前立腺炎の診断の前には、いくつかの検査をして診断を確定していきます。
NIH慢性前立腺炎症状スコア(NIH-CPSI)
慢性前立腺炎の診断や重症度を評価するための質問票です。痛みや不快感、排尿などの状態に答えていただき評価します。
尿検査
炎症性細胞(白血球)の有無などを検査します。
腹部超音波検査
前立腺肥大症や残尿の有無、膀胱の炎症所見などを確認します。
直腸診
お尻から指を挿入し、直腸越しに前立腺に触れて診察をする方法です。
前立腺に触れた際に圧痛などがあります。
慢性細菌性前立腺炎
消化管や肛門に生息している大腸菌などの腸内細菌や、クラミジアなど性感染症の原因となる細菌の感染を伴う前立腺炎を、「慢性細菌性前立腺炎」と言います。
このような場合は、抗菌薬を使用し治療を行います。
慢性非細菌性前立腺炎
細菌の感染を伴わないものを慢性非細菌性前立腺炎と言います。
仕事などで長時間座っている、自転車やバイクでの会陰部への圧迫、ストレスや疲労、過度の飲酒、喫煙、冷えなどが原因となると考えられています。
薬物治療
前立腺の炎症を抑える生薬や漢方薬、鎮痛剤などで治療します。
前立腺マッサージ
古くからある慢性前立腺炎の治療法で、お尻から指を挿入し直腸越しに前立腺を文字通りマッサージします。前立腺マッサージには骨盤内の血流改善効果があるので慢性前立腺炎の症状改善に有効です。
しかしながら、患者さんによっては苦痛を感じる方もおられるので、希望に応じて行ないます。
尿失禁治療器 Uromaster
主に尿失禁の治療に用いますが、慢性前立腺炎の症状が改善することもあります。
当院では尿失禁治療器の取り扱いがありますので、希望に応じて行なうことができます。
カテーテル治療
慢性前立腺炎に伴って炎症血管が生じている場合には、カテーテル治療が有効となり得ます。
動脈からカテーテルを挿入し、塞栓物質及び抗菌薬を炎症血管に注入することで、症状改善が期待できます。
カテーテル治療は完全自費診療となります。治療の希望やご興味がある方は、提携するカテーテル治療専門クリニックにご紹介差し上げます。
生活指導
前立腺炎の症状改善や再発を防ぐため、生活指導を行います。
長時間のデスクワークや運転などは、できるだけ控えるようにしましょう。
過度の飲酒、喫煙を控えましょう。
ストレスや疲労を溜めすぎないようにしましょう。
刺激の多い唐辛子などの香辛料も症状の増悪リスクがあるため控えましょう。