尿の匂いで病気が分かる?
通常尿は無菌であり、尿路に留まっている時や排尿直後の尿はほとんど臭いがしません。尿の成分ですが、80%程度は水分で、残りが固形成分から構成されています。固形成分の中で最も多いのが尿素で、その他塩分、クレアチン、尿酸、ウロビリンなどが含まれています。排尿してからしばらく時間が経つと、尿中の尿素が細菌に分解されてアンモニアになり、これが尿の臭いの原因となります。 飲食物の中には、摂取したものの臭いが尿に出るものがあり、こういった場合は大きな心配はありません。しかし、尿のアンモニア臭がきつかったり、甘い臭いがする場合など、なんらかの病気が関係していることもあります。
尿の臭いで心配なことがある方は、一度泌尿器科にご相談ください。
尿の臭いの原因
尿の臭いの原因には、特に気にする必要のないものから、なんらかの病気が関係していて詳しく調べた方がよいものまで様々あります。
尿路感染症
膀胱炎などの尿路感染症では、細菌が尿路に繁殖しているので、尿が尿路に留まっている時から、尿中の尿素が細菌に分解されてアンモニアになり、排尿直後からアンモニア臭が強くなります。
膀胱結石
尿路結石は多くは腎臓にでき、サイズの小さなものは膀胱まで下降します。通常尿道は広いので、膀胱まで下降した結石は尿とともに自然に流れていきます。しかし、前立腺肥大症などで排尿障害があると、結石が膀胱内に留まることがあります。また、膀胱炎が治療されずに慢性化していくと、細菌が原因で膀胱結石ができることがあり、感染結石とも呼ばれています。膀胱結石は体にとって異物であり、細菌が繁殖しやすくなり、結果として膀胱炎と同じようにアンモニア臭が強くなります。
尿道バルンカテーテル留置
尿道バルンカテーテルも膀胱結石と同様、体にとって異物であり、細菌が繁殖しやすくなり、結果として膀胱炎と同じようにアンモニア臭が強くなります。
膀胱がん(尿路上皮がん)
がん細胞は正常な組織より脆く壊れやすいので、少しの衝撃で組織が壊れます。
この壊れた組織からは腐敗臭が発生するので、膀胱がんがある場合、壊れたがん組織が尿に流れ出て尿の臭いがきつくなる時があります。
糖尿病
通常、人間はブドウ糖を分解してエネルギー源として活動します。糖尿病になると、血中のブドウ糖を細胞に取り込むインスリンが十分に働かなくなり、ブドウ糖が上手く細胞に取り込めないためエネルギー不足となります。
糖尿病が重症になると、ブドウ糖の代わりに脂質を分解してエネルギー源とするようになります。脂質が分解してできる代謝産物がケトン体で、ケトン体は尿の中に排泄されます。
ケトン体は甘い匂いがするので、糖尿病の方は尿が甘い匂いがする時があります。
糖質制限ダイエット(ケトジェニックダイエット)
最近流行しているダイエットで、糖質制限ダイエット(ケトジェニックダイエット)というものがあります。
これは糖質をほとんど摂取せず、脂質をエネルギー源とするダイエット法ですが、元々は糖尿病患者さんの食事療法として行なわれていたものです。
この場合も尿の中にケトン体が排泄されるので、尿が甘い匂いがすることがあるかもしれません。
肝臓機能の低下
肝臓は、食べ物が消化される時に発生したアンモニアを尿素に分解して、尿を排出する機能があります。
しかし、何らかの影響で肝臓の機能が低下していると、アンモニアをうまく分解することができず、体内に貯留することがあります。
体内に貯留したアンモニアが尿の中に排泄されるため、尿のアンモニア臭が強くなります。
脱水
運動などで激しく汗をかいたり、水分補給が足りない場合には、脱水状態となり尿の水分量が減ります。
尿の水分量は減るものの、固形成分の量は減らないのでその濃度が濃くなり、尿の臭いが強くなります。
これを濃縮尿と呼び、大きな心配はありませんが水分摂取をして脱水を補正する必要があります。
飲食物、サプリメント
摂取したものの影響で尿の臭いが強くなることもあります。
代表的なものとして、ニンニクやニラがあります。ニンニクやニラからアリシンが生成され、これが体内で代謝されてアリルメチルスルフィドになり呼気や尿中に排出されます。アリルメチルスルフィドはニンニクの臭いの成分であり、吐いた息や尿がニンニクの臭いになります。当院でも導入しているニンニク注射は、一般的にはビタミンB群の注射製剤です。ニンニクの主成分がビタミンB群であり、ニンニク注射の後にも尿がニンニクの臭いになります。その他、アスパラガス、アルコール、ビタミン剤なども尿の臭いの原因となります。このような場合も大きな心配はありません。
尿が臭い時に行う検査
尿検査
尿検査では、尿中の赤血球や白血球の有無などを検査することができます。
尿培養検査
尿中に白血球を認める際に行ないます。尿中に繁殖する細菌の種類を確認します。
尿細胞診検査
尿検査と同じように、提出していただいた尿を顕微鏡で確認して、がん細胞が混ざってないかを確認します。結果が陽性であれば、膀胱がんを含めた尿路上皮がんの可能性は高くなりますが、結果が陰性であってもがんがないとは言い切れません。
採血
採血では、血糖値やHbA1cで糖尿病のリスクや、炎症の程度、腎臓や肝臓機能を調べることができます。
超音波検査
腎臓や膀胱に腫瘍や結石がないか、前立腺肥大症の有無、膀胱内の炎症所見などが確認できます。
おしっこが臭いとき、何科に行けばいい?
健康な人の尿は、無臭から少しアンモニア臭がする程度です。
コーヒーやニンニクなどの刺激物やビタミン剤を摂取した時におしっこが臭い場合は問題ありませんが、強いアンモニア臭や甘い匂いなどがある際は、病気が隠れている可能性があります。
尿の臭いで心配なことがある方は、泌尿器科ヘご相談ください。
よくあるご質問
おしっこが臭い時、腎臓が悪いのでしょうか?
おしっこが臭い時、膀胱炎などの尿路感染症や膀胱結石などが原因の場合があります。おしっこが臭い=腎臓が悪いわけではないですが、これらの疾患の治療をおこなわず放置していると、将来的に腎臓の機能低下につながる可能性があります。
おしっこから甘い匂いがするのはなぜですか?
糖尿病が重症になると、人間が活動する際にブドウ糖の代わりに脂質を分解してエネルギー源にとするようになります。脂質は分解されてケトン体となり尿の中に排泄されますが、ケトン体は甘い匂いがします。おしっこから甘い匂いがする際は糖尿病の可能性もあります。
脱水で尿の臭いは変わりますか?
尿は固形成分(体内の老廃物)と水分で構成されています。脱水状態では尿中の水分量が減り固形成分の濃度が濃くなるので、臭いが強くなることがあります。
風邪の時、おしっこが臭いのはなぜですか?
風邪に限らず発熱など体調不良の際、発汗や水分補給が不足することで脱水状態になることがあります。その際は、おしっこの臭いが強くなることがあります。
子供のおしっこがいつもと違って臭い原因は?
膀胱炎など尿路感染症では、細菌が尿路に繁殖しているので、尿が尿路に留まっている時から尿中の尿素が細菌に分解されアンモニアになり、排尿の直後からアンモニア臭が強くなります。通常膀胱炎の際は、おしっこする時の痛み、頻尿、下腹部の不快感や残尿感などの症状を伴いますが、小さいお子さんはこれらの症状を上手く伝えられないこともあります。小さいお子さんのおしっこの臭いが強い場合は泌尿器科を受診するようにしましょう。
尿が臭いのは、がんですか?がんのときの尿はどんな匂いですか?
がん細胞は正常な組織より脆く、少しの衝撃で組織が壊れます。この壊れた組織から腐敗臭が発生するので、膀胱がん(尿路上皮がん)の場合、壊れたがん組織が尿に流れ出て臭いが強くなる時があります。但し、膀胱炎や膀胱結石などの場合も尿の臭いが強くなることがあるので、尿に臭いが強くても必ずしも膀胱がんという訳ではありません。