大人のおねしょ「夜尿症」とは?突然のおねしょは大丈夫?
夜尿症とは、5歳を過ぎても1ヶ月に1回以上の頻度でおねしょが起きる状態が3ヶ月以上続くものを言います。
おねしょは小さい子に多いですが、通常は成長に伴って頻度が減少し5~6歳ごろにはかなり少なくなります。
しかし、大人でもおねしょは起こることがあります。子供の頃からのおねしょが大人になっても持続している一次性夜尿症、1度治ったおねしょが大人になってまた現れる二次性夜尿症があり、その頻度は0.5~2%と言われています。
子供の夜尿症は排尿に関する機能が十分に発達していないことにより起きることが多いですが、大人の夜尿症は中には病気が原因となっていることもありますので、泌尿器科を受診してしっかりと検査や治療を受けるようにしましょう。
大人の夜尿症の原因
二次性夜尿症の原因は、加齢や自律神経の乱れ、睡眠の質の低下など生活習慣の乱れが挙げられます。
また、背景に夜尿症の原因となる病気が存在する場合もあります。
加齢
加齢によって、直腸や膀胱などの骨盤内臓器を支える骨盤底筋群がゆるんでしまうことが尿漏れの原因になります。
女性の場合、妊娠や出産などで骨盤底筋群にダメージを受ける機会が多く、元々男性に比べて尿道も短いこともあり、尿漏れを起こしやすくなります。
また、睡眠中に尿意によって目覚めても加齢によって動作が緩慢になり、トイレに行くのが間に合わない場合もあります。
自律神経の乱れ
自律神経は呼吸や体温調整などの生命維持に必要なものを、人間の意思と関係なく調整する神経です。
自律神経は膀胱の収縮や拡張、尿道の開閉といった排尿コントロールにも関与しています。
自律神経が不調になると、この排尿のコントロールが上手く行えず、膀胱の拡張が不十分になると尿を少量しか溜められないようになり、尿漏れを起こすことがあります。
このように、ストレスや不規則な生活習慣によって、自律神経に乱れが生じることが尿漏れの原因となります。
睡眠の質の低下
抗利尿ホルモンは脳下垂体から分泌され、腎臓での尿の再吸収を促進することで尿量を少なくするホルモンです。
夜間睡眠中は、抗利尿ホルモンが分泌されるため尿量が抑えられます。
睡眠の質が低下すると、抗利尿ホルモンの分泌量が減少します。これにより通常よりも睡眠中に膀胱内に貯留する尿量が増え、結果として尿漏れを起こすことがあります。
生活習慣の乱れ
生活習慣も尿漏れに関係してきます。生活習慣の乱れなどで良質な睡眠をとれないと、先に述べたように夜尿症の原因となります。
またアルコールには利尿作用があり、ビールなどはそのほとんどが水分です。
眠前の飲酒が習慣化している人は、アルコールの利尿作用や水分摂取過多が原因となり夜尿症となることがあります。
大人の夜尿症の原因となる病気
過活動膀胱
急に起こる我慢出来ないような尿意(尿意切迫感)を感じる病気で、頻尿や夜間頻尿、場合によっては急に起こる尿意でトイレに行くまでに尿が漏れたり、漏れそうになったりする切迫性尿失禁を伴います。
40歳以上の男女の1割以上が罹患しており、特に女性には、尿漏れを伴う過活動膀胱が多いと言われています。このような症状から、過活動膀胱に罹患すると夜尿症の原因にもなります。
前立腺肥大症
前立腺は男性にのみ存在する膀胱の下にある組織で、尿道を取り巻くように存在しています。
前立腺は内腺(尿道に近い部分)と外腺(内線を取り巻くように存在する外側の部分)からなり、前立腺肥大症は内腺が大きくなる病気です。前立腺肥大には男性ホルモンなどが影響すると言われており、一般的に年齢とともに肥大は進行していきます。尿道の圧迫や尿道の抵抗が増大することで、尿の出が悪くなったり、頻尿や残尿感などの症状が現れます。残尿量が多くなると、膀胱内に溜めきれなくなった尿が漏れ出てしまう溢流性尿失禁を起こすことがあり、これが夜尿症の原因になります。
神経因性膀胱
脳や脊髄などの病気により排尿をコントロールする神経が障害を起こし、膀胱にしっかり尿を溜めたり、正常な排尿ができなくなったりする状態です。原因としては、脳梗塞やパーキンソン病など脳の病気や、脊髄損傷や腰椎椎間板ヘルニアなど脊髄の病気、糖尿病や子宮がん・直腸がんなど骨盤内の手術による末梢神経の障害などがあります。膀胱にしっかり尿を溜められない場合は尿漏れが起きることがあり、これが夜尿症の原因になります。
糖尿病
糖尿病の影響で体内の血糖値が高い状態が続くと、体内の糖分を排出するために大量の水分を摂取するようになり、尿量が増える多尿になります。この多尿が夜尿症の原因となります。
また糖尿病による末梢神経障害が進行して、神経因性膀胱の状態になることでも夜尿症を来すことがあります。
便秘
骨盤内で、膀胱と直腸は近接しています。
便秘によって腸内に溜まった便が膀胱を圧迫すると、膀胱内の尿貯留量が減少し、尿漏れを起こしやすくなります。
この尿漏れが夜尿症の原因となります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は、主に睡眠中に無呼吸と大きないびきを繰り返す病気です。
睡眠の質が低下することで様々な影響がでますが、先に述べたように自律神経の乱れから夜尿症を来すことがあります。
大人の夜尿症の対策・改善方法
睡眠の質を上げる
睡眠の質を上げることで抗利尿ホルモンの分泌を助け、尿量を抑えることが可能になります。
規則正しい生活を送ることにより十分な睡眠時間と睡眠の質を確保するようにしましょう。
寝る前のお酒を控える
アルコールは元々利尿効果のある飲み物ですので、寝る前に飲酒をすると睡眠時間中の尿意を催しやすくなります。寝る前の飲酒は控えましょう。
適度な運動
適度な運動を行うことで便秘などの予防に繋がるほか、生活習慣を改善することによって、自律神経のバランスが保たれるようになります。
原因となる病気の治療
上記のように、夜尿症には背景に原因となる病気が隠れていることがあります。
その場合は、原因となる病気に対して適切な治療を受けていただく必要があります。
大人のおねしょで受診する目安
「おねしょの原因に心当たりがない」とか「おねしょを繰り返している」といった状況を自覚している場合は、背景に病気が隠れている場合があります。
大人でおねしょ、と恥ずかしくて病院を受診できない方もいらっしゃいますが、泌尿器科へご相談ください。
何科を受診する?
大人のおねしょは泌尿器科を受診するのが適切です。原因となる病気も泌尿器に関するものが多いためです。